メガネのこと

メガネのフレーム素材の違いは、数年後の変化で選ぶ

「セルとメタル、どっちがいいんですか」というご質問は、売場でいちばん多いもののひとつです。かけた瞬間の軽さや見た目は比べられても、素材の違いが本当に出てくるのは、買ってから二年、三年たったあと。この記事では、スペックの一覧ではなく「数年使ったときに何が起きるか」という角度から、フレーム素材の違いと自分に合うものの見当をつける順番をお話しします。

素材の違いは、買うときより「二年後」に出る

お店に並んでいる状態のメガネは、どれもきれいです。傷もないし、ネジも締まっているし、かけ心地も新品なりに整っています。だから店頭で比べられるのは、重さと見た目と、その日の当たり具合くらい。

ところが実際に毎日かけて、汗をかいて、洗面所に置いて、カバンに放り込んで、を数年くり返すと、素材ごとに違う変化が出てきます。色があせてくるもの、ネジや蝶番が緩みやすいもの、当たりが出てくる場所が決まっているもの、そして壊れたときに直しやすいもの・直しにくいもの。

ここを知っておくと、選び方の軸が変わります。「今かけて気持ちいいか」だけでなく、「二年後もこの状態を保てそうか」「崩れたときに戻せそうか」まで見られるようになるからです。長くかけるものなので、こちらの視点で見ておく価値はあります。

セル(プラスチック系)は、色と形の変化が出る

いわゆるセルフレームは、プラスチック系の素材でつくられたもの。アセテートと呼ばれる素材が多く使われます。太さや色を自由に出せるので、デザインの幅が広いのが特徴です。

数年使ったときに出やすい変化は、大きく三つあります。

ひとつは色とツヤの変化。濃い色のものは比較的わかりにくいのですが、明るい色、透明感のある色、べっこう柄のようなものは、時間とともに少し白っぽく、あるいはくすんで見えてくることがあります。表面のツヤが落ちて、しっとりした質感に変わるという言い方もできます。これを「劣化」と感じる方もいますし、「馴染んできた」と楽しむ方もいます。ここは好みの分かれ目です。

ふたつめは形のゆるみと歪み。プラスチック系は熱でやわらかくなる性質があるので、調整で細かく合わせられる反面、夏場の車内に置いたり、熱いお湯で洗ったりすると形が変わることがあります。長く使っていると、テンプル(つる)の開き具合が広がって、かけたときに横にずれやすくなる方が多い。これは店で温めて締め直せる範囲のことが多く、深刻な話ではありません。

三つめは当たりの出方。セルは面で当たるので、圧が一点に集中しにくい。そのかわり、耳の後ろのカーブ部分と、鼻の一体型パッドの部分が合っていないと、じわっと広い範囲が痛くなります。「どこが痛いか指せない痛さ」はセル特有です。

メタルとチタンは、緩みと当たりの出方が違う

金属系のフレームは、細い線で顔に乗るので軽く見え、視界のじゃまが少ないのが持ち味です。ただ、ひと口に「メタル」と言っても中身はいろいろで、ステンレス系、洋白、そしてチタン系があります。

数年後に出やすいのは、まずネジと蝶番まわりの緩み。金属フレームは折りたたむ蝶番の構造が小さく精密なので、開閉をくり返すうちにネジがわずかに緩みます。「片方だけ下がる」「たたむときにカタカタする」というご相談は、たいていここ。締め直しで戻る場合が多いですが、放置してネジが抜け、レンズが外れて傷が付くというのがいちばんもったいないパターンです。

もうひとつは鼻あて(パッド)の当たり。金属フレームは鼻パッドが独立していて、腕の部分で角度と高さを細かく変えられます。裏を返せば、この腕が曲がると片側だけ強く当たるようになります。「左の鼻の一点だけ赤くなる」というのは、金属フレームのほうがよく起きます。ここは調整で動かせる場所なので、我慢する前に見てもらってほしいところです。

チタンは、金属の中では軽さと、汗や湿気に対する強さが持ち味です。金属が肌に触れて赤くなりやすい方に選ばれることも多い素材です。ただし「チタンなら絶対に問題が起きない」という話ではなく、体質は人それぞれなので、肌の反応が続くようなら皮膚科の領域として一度診てもらったほうが確実です。

そしてもう一点、正直なところを書いておくと、細い金属フレームは、大きく歪んだときに元へ戻しきれないことがあります。金属は曲げ伸ばしをくり返すと弱くなるので、一度大きくひねってしまった箇所は、無理に戻すと折れる。ここは「直せます」と言い切れない部分です。

混ぜてある素材、コンビの見どころ

フロント(前枠)がセルで、テンプルが金属というコンビネーションのフレームもよくあります。見た目の印象はセル寄り、かけ心地は金属寄りにできるので、間を取りたい方に向きます。

数年後に見ておきたいのは、素材の継ぎ目。違う素材をつなぐ場所には、必ず接合部があります。ここは構造上、力がかかりやすい。ぐらつきが出ていないか、隙間が開いていないかを、ときどき見てもらうと安心です。

また、金属パーツに色を乗せてあるタイプは、まぶたや指がよく触れる場所から色が薄くなっていきます。前枠の上辺、テンプルの折りたたみ部分あたりです。ここは修理で戻る話ではないので、「色が落ちてきても味に見えるか」を買う前に想像しておくと、後悔が少なくなります。

直しやすさで見るという、もうひとつの軸

長く使う前提なら、素材選びに「直しやすさ」を入れておくと現実的です。見るのはこのあたりです。

ネジで留まっているか、一体成型か。 ネジで組まれている構造は、緩んだら締められる、パーツが替えられる可能性がある、という強みがあります。

鼻あてが交換できる形か。 金属フレームの多くは鼻パッドを交換できる構造です。セルの一体型でも、あとからパッドを足して当たりを変える方法があります。当店でも鼻あてのカスタマイズには対応していますが、フレームの形によって出来ることが変わるので、実物を見ないと判断できないのが正直なところです。

特殊な形状に頼りすぎていないか。 個性的な形は魅力ですが、その形でしか成立しない構造は、崩れたときの選択肢が少なくなります。

そして、どの素材にも共通することが一つ。メガネは、素材の差より「合わせ直しているかどうか」で状態が決まります。 半年、一年に一度でも、かけ具合を見てもらっているメガネは、素材にかかわらず長持ちします。逆に、緩んだまま二年かけ続けたメガネは、素材が何であってもレンズに傷が増え、耳と鼻に無理がかかります。

決める順番と、店で確かめたいこと

最後に、迷ったときの順番をまとめます。

  1. 今のメガネで困っていることを一つ書き出す。 重い、痛い、ずれる、色があせた。困りごとが決まると、避けるべき素材の方向が絞れます。
  2. 一日で何時間かけるか、どこに置くかを思い出す。 朝から夜までかけっぱなしなら軽さと当たりの分散、家では外して置くなら置き場所での歪みも考えます。
  3. 色の変化を許せるかどうかを決める。 ここでセル系か金属系か、だいぶ寄ります。
  4. 実物をかけて、三十秒より長く様子を見る。 かけた直後は誰でも「軽い」と感じます。少し会話をして、下を向いて、また正面を見る。そのくらいの時間で当たりの出る場所が見えてきます。
  5. 緩んだときに誰に見てもらうかを、買う前に決めておく。 これがいちばん忘れられがちで、いちばん効く点です。

うまくいかないことも書いておきます。素材を変えても痛みや違和感が消えないことはあります。フレームの大きさや幅がそもそも顔に合っていない場合、素材の話では解決しません。それから、見えにくさ・かすみ・目の痛みといった症状は、フレーム素材とは別の話です。眼の症状や病気は眼科医が診る領域で、お店でできるのは見え方のご相談と、メガネの調整までと線を引いています。気になる症状があるときは、先に眼科へ行っていただくのが確実です。

そのうえで、素材の違いは、かけて、少し時間を置いて、掛け具合を合わせてもらいながら比べるのがいちばん分かりやすい。HAUSのメガネ売場には一級眼鏡作製技能士が常駐していますので、今かけているメガネを持ってきていただければ、どこが緩んでどこが当たっているかを一緒に見ながら、次の一本の素材を考えることもできます。何本かかけ比べてみるだけでも、判断材料はぐっと増えます。

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